バニラアイス

アイデアを抽出するときには、イロイロな角度から切り込んでみたり、距離感を調整してみたり、回転や反転させてみたり、思いつく限りのアプローチで考えをめぐらしてみます。
例えてみれば、31種類のアイスクリームを全部食べてみるということです。全て味わってみて「やっぱりバニラだね!」という結論に至るのです。
これは、他のアイスには目もくれず、最初っから「バニラだよーっ!」と食べるのとは大きく違います。
結果は同じでも、プロセスがまるで異なるのです。当然ながら、プロセスが異なると意味も異なってきます。
一つ一つのアイスを味わい、特徴を掴みながら試行錯誤を繰り返して行き着いた先に「やっぱりバニラだね!」という結論には重みというか、飛ばしてはいけない階段があるように思います。
「バニラだよーっ!」のような、安易に手近で馴れた解決策で間に合わせてしまえ!といったことではなく、良い意味で徒手空拳というか暗中模索ぎみに、もがき苦しんで「やっぱりバニラだね!」と見出す基本動作から生まれるものかもしれません。これは一見、非効率で要領の悪い手順のように感じるかもしれませんが、実は「ビジュアル化」する際には大きく影響するのです。
「やっぱりバニラだね!」は、最近の「小説を映画化する」場合にも見受けられます。映画のスタッフが作者にビジュアルイメージを聞取り「ビジュアル化」してゆきます。
例をあげると、小説に「後を追っていると、すぐ先を曲がったところで忽然と姿を消してしまった」とあった場合、コレを「ビジュアル化」するには、追っている風景、時間帯、天候、通行人、服装、髪型、体格、年齢、性別、足音、息づかい、距離、曲がる方向・・・などなど、あらゆる設定を決めなければシーンが描けません。つまり「ビジュアル化」できないのです。同じ文章であっても「ビジュアル」によって全く違った印象になってしまいます。
「ビジュアル化」には具体性が無ければ成立しないのです。
アイスの事例から少しズレてしまいましたが、基本動作を見くびると「ビジュアル化」といった表現には行き着かないのは同じです。どんなに面倒くさくても時間が無くても、基本動作から逃げない姿勢で制作してゆかなければなりませんね。

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